グリーエンターテインメント株式会社は、2025年1月にライブサービスゲーム事業をグループ内の株式会社WFSへ移管。これまで取り組んできたアニメ製作・ゲームライセンス事業により一層注力し、多角的にIP(知的財産)をプロデュースする会社として、新体制で歩み始めました。今回は代表取締役社長を務める柿沼さんとIPプロデュース事業部 部長の宿輪さん、ライセンス事業部 部長の渡邉さんに同社の未来を語っていただきました。

柿沼 洋平:グリーエンターテインメント株式会社 代表取締役社長
2010年 グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。前職では大手インターネット企業でトラベル事業に従事し、グリー入社後はデベロッパーリレーションとして、GREEプラットフォームの営業を担当。2013年にサイバーエージェントとの合弁会社グリフォンの設立に参画し、取締役に就任。2018年よりグリーグループの子会社であるWFSへ異動し、2021年10月1日にWFS Business Development本部 本部長に就任。社外とのビジネスリレーションの統括を行い、『ヘブンバーンズレッド』のプロデューサーを務める。2023年7月1日付でグリーエンターテインメントの代表取締役社長に就任。
>
宿輪 浩介:グリーエンターテインメント株式会社 執行役員 IPプロデュース事業部 部長
2009年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。前職では、複数の企業にて法人営業を経験。入社後、いくつかの新規事業に関わった後、IP獲得チームを立ち上げ、事業化を推進。海外・国内パートナーとのモバイルゲーム共同事業とアニメの製作事業を担当する。2021年よりグリーエンターテインメント株式会社に出向し、同年7月に執行役員に就任。現在に至る。
渡邉 亮介:グリーエンターテインメント株式会社 執行役員 ライセンス事業部 部長
2010年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。前職では、ゲーム会社にて、アカウントマネージャーとして日本のモバイルゲームの配信事業に従事。入社後、GREE プラットフォームにおける国内外の大手ゲームパブリッシャーとの協業や、新規事業の立ち上げに関わった後、ライセンス事業部部長として事業に参画する。2021年よりグリーエンターテインメント株式会社に出向し、同年7月に執行役員に就任。現在に至る。
グリーグループで培った土台があるからこそ、IP Growth Companyになるのは夢ではない
ーーIPプロデュース事業部ではどのようなビジネスを行っていますか?
柿沼:IPプロデュース事業部は、IPを創出する事業と、それらを活用した事業を展開する役割を担います。グリーグループはアニメの製作委員会への参加や原作の開発、作品のグローバル展開をプロデュースする事業を約10年にわたって手掛けてきました。その過程でパートナー企業も増えて事業の幅もどんどん広がっています。そういった経験や知見をもとに、音楽プロデュースやマーチャンダイジング事業などへの展開も積極的に行っていきます。
ーーIPプロデュース事業での直近の主な取り組みを教えてください。
宿輪:IPを創出する事業では、アニメの製作委員会の主幹事として、原作と制作スタジオの選定、ゲーム展開をはじめとした国内外での事業開発など、作品のグローバル展開をプロデュースしています。また、アニメ事業とシナジーが高い分野として、音楽レーベル事業やマーチャンダイジング事業の立ち上げに着手し、すでに複数の取り組みで目標を達成し、手ごたえを感じています。
柿沼:IPプロデュース事業部を立ち上げた際、宿輪さんとは「チャレンジする機会を増やそう」という話をしましたよね。グリーグループが大事にしてきた「徹底的に考える」という文化にもつながることですが、ゴール設計やプロセスの整合性などを考え抜いた上でも、ヒット作品を生み出すことは容易ではありません。ただ、作品がヒットしなかった時でも単なるマイナスと捉えず、徹底的に向き合った経験や新たな取り組みを資産と捉えています。
宿輪:そうですね。加えて、我々の強みはIPプロデュース領域における“ベンチャー”として、新しい技術や取り組みに寛容でありたい、そう考えています。
元々柿沼さんとは会社のイベントで幹事を一緒に担当したり、それに関連する映像を一緒に制作したりとか、どちらかいうとプライベートでの付き合いがメインでしたが、一緒に仕事をするようになってこんな風に話をするようになるなんて…なんだか感慨深いですね(笑)。
柿沼:実は、僕の結婚式で妻へのサプライズライブをプロデュースしてもらったこともあって。当時は激務の中で準備を進めていたので、途中で心が折れそうになった僕がちょっとでも妥協しようすると「お前の一生の覚悟はそんなものなのか?」と言われて襟を正したことを今でも覚えています(笑)。
宿輪:そんなこともありましたね(笑)。お互い、グリーに入社して15年以上がたちましたね。
柿沼:この15年でアニメは単なるコンテンツではなく、日本での放送を起点にメディアミックスをしたり、配信プラットフォームの発展で海外での視聴者が増えたりとかなり広がりを見せていますよね。グリーグループも、人気アニメとのコラボレーションをゲーム制作会社に提案したり、それこそ自分たちが製作に関わっているアニメをコラボレーション先として選んでもらうことでより多くの方へ届けられたりと、この時代の流れにあわせて成長してきています。

――IPプロデュースの業務で大切にされていることは何ですか?
宿輪:今はファンも作品も多様化が進んでいるので、さまざまなニーズを正しくキャッチすることが重要になっていると思います。
柿沼:宿輪さんをはじめ、今のチームメンバーであれば多様化にも対応できる力があると思っています。
宿輪:アニメ製作委員会で主体となって制作やプロデュースを進めていくと、一つの作品に関わっている人の思いや考え方は多種多様だということにも気づかされます。だからこそ、大切な作品を預けてくださっている原作者さま、楽しんでくださるファンの皆さま、そして各ステークホルダーの皆さまの考えや思いを僕自身が正しく理解し、それを言語化してメンバーに伝えることが、より良いアニメ製作や楽曲制作などにつながっていくと思いますね。

――IPプロデュース事業の今後の目標を教えてください。
宿輪:当社のミッションである「日本発のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」の実現を目指して、3年後を目標に世界を熱狂させるIPを創出すること、そして10年後にはIP Growth Companyを体現すべく、それらを持続的に育てていくことが目標です。
柿沼:「グリーってアニメの会社じゃなかったんですか?」と言われるくらい、我々の取り組みはグリーグループにおける存在感がある事業になっています。そういう土台がある我々なら、総合的なIPプロデュースカンパニーになることは決して夢ではないと思っています。今、自社以外のアニメIPの総合プロデュースとして他社様と協業するケースが増えています。興味をもってくださる企業様のお役に立てることがあると感じましたら気軽にお声がけいただきたいですね。

継続的にIPの成長に寄与することで「日本発のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」を体現できる
ーーライセンス事業部ではどのようなビジネスを行っているのですか?
柿沼:自社のアニメIPを核として自社以外のIPも扱いながら、グローバルでのゲーム展開やゲームコラボなどをプロデュースしています。
ーー直近の主な取り組みを教えてください。
渡邉:アニメIPを核とした、ゲームの海外共同開発事業の継続と立ち上げが主な取り組みです。『ワンパンマン:最強の男(現地タイトル「一拳超人:最强之男」)』、『BLEACH:Immortal Soul』、
『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』は5年を超えるサービスとなっており、世界中で長く愛されていると言えます。また、IPプロデュース事業部で獲得したアニメの版権を活用して、ゲームの共同開発をグローバルのマルチプラットフォームで展開していくというプロジェクトを進めています。

WANDA CINEMAS GAMESとグリーエンターテインメントの共同事業である、アジア・北米・南米・欧州にて配信中のスマートフォンアプリ『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』。2024年1月18日より日本でも配信中。
柿沼:最近はIPコラボの案件も多いですね。
渡邉:仕事柄海外のゲーム会社様と広くお話をすることが多いのですが、ゲーム化だけでなく、短期的なコラボとしてのアニメIP利用の熱が高まっています。もちろん、今までもニーズはあったのですが、ゲームの市場成長が少し鈍化している地域に関しては、既存のゲームがアニメIPとコラボすることで、新しい付加価値を加えたいと考えるパートナー企業が増えてきています。
ーーグリーエンターテインメントのライセンス事業の強みは何ですか?
渡邉:グリーはグループとしてたくさんの版元さまにお世話になっており、特にデジタル領域での成功体験が豊富にあることが強みと言えます。ライセンス事業部としては、狙い通りの効果を得るためのプロデュース能力、それを計画通りに世に送り出すためのプロジェクトマネジメント能力、そして、数多くのIPに携わらせていただいていることから、作品への理解力も強みです。
柿沼:ゲーム分野のライセンスで難しいところは、絵やセリフを一つ使うにしても「この使い方はいいけど、この使い方はダメ」といったものが膨大にあるところです。海外のパートナー企業の意図を正しくくみ取って版元さまに伝えることが重要で、少しでも間違った伝わり方をしてしまうと本来なら実現できることが実現できなくなる可能性があります。正しく伝えるためのノウハウや、代案を提示できる“引き出し”が渡邉さんを中心としたメンバーに蓄積されていると感じます。渡邉さんはビジネスマンとしてすごくセンスを持っているだけでなく、ゲームが好きなだけあって使命感とコミット感が強いな、という印象です。
ところで、結構慌ただしくしていると思うけど、ゲームを楽しむ時間はあるの?
渡邉:家族が寝静まった後でこっそりと。寝不足でも仕事はしっかりやります(笑)。
柿沼:渡邉さんとの付き合いは結構長いから、その点は信頼していますよ。
渡邉:月並みな表現ですけど、柿沼さんと私は互いのいいときも悪いときも知っています。何か目の前に障壁が生まれたとしても「これくらいのことなら過去に乗り越えられてきたし、今回も大丈夫だよね」と一喜一憂せず中長期のビジョンを持って話ができる貴重な存在に感じています。

ーーライセンス事業において大切にされていることは何ですか?
渡邉:IPのファンが世界中にいて、そのファンが望むコンテンツを、できる限り良いかたちで、いち早く届けることを大事にしています。私自身も高校生の頃、とあるIP関連のグッズが欲しかったのですが、当時は日本で手に入れるのが難しく悔しい思いをしました。そういう原体験から「もっとIPを知りたい」「IPの世界観を楽しみたい!」という思いをしている人がたくさんいるのではないかと考えています。今、これだけ世界中で日本のアニメが視聴されているならなおさらです。
柿沼:旬なものを最適なタイミングで届けるのも重要なアプローチです。加えて、日本では少し落ち着いたIPでも、海外のある地域では盛り上がっているという事例も目にします。そういう動きを敏感にキャッチしてコンテンツを届けられると、まさに自分たちのミッション「日本発のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」が体現できると思います。最近では、IPコラボが第2弾、第3弾と続く中で、復刻コラボを実現できるようになっていて、本当にうれしいし、とにかく楽しい。単に“一度展開して終わり”ではなく、継続的にIPの成長に寄与することが僕らの目指す姿です。
渡邉:私自身も「日本発のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」というミッションがものすごく気に入っています。自分たちが生み出したコンテンツが国境を越えて世界に届いていく、しかもそれが絶え間なく。そうなることに大きな喜びを感じます。

ーーライセンス事業の目標をお聞かせください。
渡邉:グリーエンターテインメントにはIPプロデュース事業とライセンス事業という、2つの事業があります。それぞれが両輪として独立して回っていき互いをリードすることが、会社の成長につながると思います。IPプロデュース事業のスピードを我々が落とすことがないよう、単に世界を熱狂させるだけでなく、収益面でも貢献していくことがライセンス事業の目標です。素晴らしいコンテンツを仲間たちとともに生み出して、それらに触れて楽しんでもらえる人を1人でも多く増やしたいですね。
自発的かつ自律的なチャレンジが自然とシナジーを生んでいく、そんなユニークな会社にしたい
ーー今後、グリーエンターテインメントをどんな会社にしていきたいですか?
柿沼:自分たちがIPの成長に寄与できて、そのIPの成長に伴って自分たちの事業も大きく成長させていく、そんな流れを生み出していきたいです。繰り返しになりますが、チャレンジする機会を増やしていけるような経営フレームや勝ち筋戦略を考えています。その上で、メンバーがやりたいことを自発的に発信し、それを起点とするプロジェクトが自律的に回りながら、徐々にシナジーを生むようになっていけば、結果的にバランス感のあるユニークな会社になるとのではないかと思っています。今後も志のある仲間が増えるとうれしいです。

ーー最後に、グリーエンターテインメントの皆さんへのひと言をお願いします。
柿沼:ここまでに話したことは全て本音です。ちょっと違うんじゃない…?と感じた方は、ぜひ直接意見を聞かせてください。(笑)会社とメンバーのゴールが一致することが互いの幸せだと思うからこそ、対話を通じて相互理解を促し、さらにより良い方向性を模索していきたいと考えています。皆さん、一致団結して頑張っていきましょう!
