日本のアニメIPで世界を熱狂させる。グリーエンターテインメント海外事業の挑戦

グリーエンターテインメント株式会社の海外事業開発グループでは、世界中のファンを一人でも多く喜ばせたいという思いのもと、日本のアニメIP(知的財産)のライセンスを海外へ展開する事業を行っています。今回は、グリーグループで長きに渡ってライセンス事業をけん引している渡邉さんと、海外事業開発グループのフロントメンバーとして奮闘する陳さん、金さんが、海外事業の目指す未来と、それにかける思いを話しました。

渡邉:グリーエンターテインメント株式会社 執行役員 ライセンス事業部 部長
2010年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。入社後、GREEプラットフォームにおける国内外の大手ゲームパブリッシャーとの協業や、新規事業の立ち上げに関わった後、ライセンス事業部部長として事業に参画する。2021年よりグリーエンターテインメント株式会社に出向し、同年7月に執行役員に就任。現在に至る。


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陳:グリーエンターテインメント株式会社 ライセンス事業部 海外事業開発グループ 海外事業開発チーム マネージャー
香港出身。数年間香港の金融業界で働いた後、2018年に来日しコンテンツ業界に入る。2022年にグリーエンターテインメント株式会社へ入社。海外パートナーと共同で開発するアニメIPのゲームやコラボ案件のクライアント担当をする他、アニメ作品の海外展開を推進。



金:グリーエンターテインメント株式会社 ライセンス事業部 海外事業開発グループ 海外事業開発チーム
韓国出身。金融業界の法人営業を経て、2021年9月にグリーエンターテインメント株式会社へ入社。韓国企業と共に日本のアニメIPを活用した新規ゲーム及びコラボ案件を推進する。

日本のアニメIPを海外へ進出させる架け橋となり、数多くの実績を残してきた

ーーグリーエンターテインメントの海外事業ではどのような業務を行っていますか?



渡邉:主に日本のアニメIP(以下、IP)を核として、海外の企業さまとゲームの共同開発事業を行っています。これまでに『ワンパンマン:最強の男(現地タイトル「一拳超人:最强之男」)』、『BLEACH: Immortal Soul』、
聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』などの、長く愛されている作品のゲーム化を手掛けてきました。いずれも、海外地域を中心に5~6年以上サービスを継続しており、非常に息が長い事業になっています。
また、IPを必要としている海外のゲーム会社に対し、版元さまから許諾をいただき、ゲームコラボを実現させる支援も行っています。
これは単なるサブライセンス※ではありません。これまでにグリーグループがゲームの分野で培ってきた知見とノウハウを生かし、より高いクオリティで、タイムリーにゲームコラボをリリースするための提案や、そのためのプロデュース業務を行うことで価値あるコラボを生むものです。

※サブライセンス・・・版元から許諾を受けたライセンスを他の会社へ再許諾すること。


『ワンパンマン:最強の男』(現地タイトル『一拳超人:最强之男』)

『BLEACH: Immortal Soul』

『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』

ーーそもそも、グリーエンターテインメントでIPのグローバル展開に取り組むことになったきっかけを教えてください。



渡邉:グリーグループはライセンシー※として、多くのIPの許諾をいただく機会に恵まれ、国内外のさまざまな版元さまと取引を重ねてきました。私たちが展開するゲームコンテンツ、特にIPをもとにしたゲームコンテンツの海外展開や、開発自体を海外で進めていくニーズが高まってきたのは2015年頃で、「日本で開発して日本で配信する」というモデルから「海外で開発して海外に配信していく」という方向に舵を切ったことが、大きな転換点となりました。

※ライセンシー・・・他者が保有する知的財産権を使用する権利を許諾された企業を指す。

ーー陳さん、金さんは現在どのような業務を担当されていますか?



陳:海外向け事業の主に二つの領域を担当しています。一つは、日本のIPと海外の企業とのゲーム共同事業における事業開発とアカウントマネジメントです。自社が出資しているアニメIPに加えてそれ以外のIPも含め、コンサルタントという立場で日本の版元さまからIPの許諾をいただき、海外のゲーム会社と共同事業をする業務も担当しています。もう一つは自社出資のアニメIPにおける海外販売とライセンス運用を担当しています。



金:私は主に二つの領域を担当しています。一つは、韓国の開発会社と共に日本のIPを活用した新規ゲームの開発推進をすることです。もう一つは、ゲーム会社からのコラボ要望に応じて企画提案から契約締結までの各種対応、また、その実現に向けた版元さまとの調整や版権取得に係る業務を担当しています。その他にも、陳さんのサポートとして、自社出資アニメIPの海外販売にも携わっています。

IPの価値を最大限に生かすためには、対等かつ丁寧なコミュニケーションが必須

ーー海外企業とのライセンス契約や共同事業契約において、特に留意している点はありますか?



渡邉:プロダクトが世に出ていくタイミングを一番大事に考えています。許諾を取ってからあまりにもタイミングが早すぎると求めるクオリティに達することが難しくなりますし、だからといってクオリティにこだわることに時間をかけ過ぎてしまうと機会損失につながってしまいます。この二つのバランスの見極めに留意していますね。



陳:ゲームのコラボ案件において、海外のゲーム会社からは何らかのイベントに合わせて既存のお客さまを喜ばせたい、もしくは新規のお客さまを獲得したい、という要望を伺うことが多いです。しかし版元さまにも許諾可能なタイミングがあるので、案件ごとに最適解を探る必要性も感じます。



金:私も同様です。より良いゲーム企画のためには事前の準備も大切だと思います。海外からは、今後放送予定の作品や周年などをきっかけに露出が増える作品に関する情報をリアルタイムで入手することが難しい場合が多いため、作品情報やファンからの期待値などを整理し、「このタイミングであれば御社にとってこの作品とのコラボが実現できそう」といった先回りのアプローチを行っています。



陳:IPの許諾においては交渉から契約までに相応の時間が必要で、それはその後の工程の開発や監修も同様です。事前にIPの許諾において必要なプロセスとスケジュール感を、海外のゲーム会社にしっかりとすり合わせをしておく重要性も感じます。



渡邉:単に必要なIPの許諾を得るだけではなく、コンサルティングに近いイメージですよね。ゲーム会社出身という視点を交えて幅広く提案できることが我々の価値です。



金:非常に共感します。グリーグループにはIPに関わるノウハウが蓄積されているので、例えばAのプランは実現が難しいけれど、プランB、プランCといった回避策や代案を提案できるところは私たちの強みです。

ーー国や地域ごとに異なる文化や商習慣に対応するために、どのような工夫やアプローチを行っていますか?



陳:IPの許諾に関する考え方、という観点だと、例えば契約一つを取っても国により異なります。版元さまと対等であることを重視する国、ライセンス料を支払った側の企業が優位であると考える国など認識に違いがあると感じます。



金:だからこそ、IP許諾の一連の流れや、どの範囲までが許諾に含まれているかなどをまずは丁寧に説明することが重要です。例えば、ゲームとのコラボで締結される商品化許諾契約にはボイスやアニメ映像の使用は含まれず、別途契約が必要になるケースが多いです。これらの当たり前のように見えて実は海外から理解しづらい条件の周知に、より努めていきたいです。



渡邉:ライセンス事業において、日本では許諾を受けたとしても“大事なIPをお預かりする”というスタンスでビジネスを進めていきますが、世界的に見るとそういうスタンスの会社ばかりではありません。我々の役割は、良い意味での日本的な考え方、大事な原作やIPをどう活用していくのが正しいやり方なのか、どういう恩恵をそのIPから受け取り、また返していくのが正しいのかなどを取引先の海外企業に発信・啓発することが大切ですよね。



陳:私たちの立ち位置は、ライセンシーであり、版元さまとIPの思いを託された者でもあると考えています。ゲーム会社でもあり、IP案件を数多く手掛けてきたグリーグループには、ライセンシーの立場で求めるメリットや考えうるリスクなど、これまでの経験による知見があります。同時に、版元さまとして譲歩できない部分などを客観的に説明できるよう、コミュニケーションの取り方を工夫しています。


ーーIPの展開を検討する際、ターゲット市場やパートナー企業を選ぶ基準は何でしょうか?



渡邉:日本で生まれるIPを世界で一人でも多くの人に届けることがミッションであり、私がこの仕事で一番やりがいに感じているところです。“ボーダーはない”を前提に、ビジネスの観点から様々な実現可能性や妥当性などを吟味・評価し、その実現に向けて必要なプロセスを検討しています。



陳:その企業がなぜそのIPを活用したいのか、目的が明確であることに加えて、制作チームがそのIPに対して情熱を持っているのかという点も注目しています。また、過去に同様のコラボレーション経験があるか、その場合はきちんと実施できたかという実績も、客観的に判断できる重要な指標となります。これらの要素を総合的に評価することで、IPとゲームの双方に価値をもたらす案件になり得るかを見極めています。



金:私自身は、「今までIPコラボを実施した経験がない」、「IPコラボを実施したことがあっても思うような結果を残せなかった」という企業にこそ積極的にアプローチしています。また、ゲームコラボ後には、弊社と許諾先の主要メンバーを集め、今後に向けて話し合う場を設けることがあります。そうした場に積極的に参加し、率直な対話を重ねてくださるかどうか、コミュニケーションに対する姿勢も重要なパートナー選びの基準の一つと考えています。

ーー陳さんと金さんがグリーエンターテインメントで働く上でのモチベーションは何ですか?



陳:学生の頃に自分自身が日本のアニメにのめり込んだ経験から、そんな魅力ある日本のIPを世界中に広げたいという夢があり、グリーエンターテインメントの海外事業ならかなえられると思って働いています。加えて、自分が関わって育て上げたIPへの愛情は何にも代えがたいもので、そんなIPをより多くの人に届けたいという気持ちが日々の原動力になっています。あとはアニメだけでなくゲームにも携われるのもモチベーションです。



金:本人の希望に応じてさまざまな業務に携われることができるのも魅力ですね。私も陳さんと同様に幼少の頃からアニメが好きです。韓国では“성덕(ソンドク)成功したオタク”という言葉がありますが、これは趣味を極めてその分野の仕事に就いたり、憧れの人と実際に会えたりした人のことを指します。自分はまさに成功したオタクになったっていう喜びを感じながら仕事をしています。

盤石の体制で「日本のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」を実現する

ーーグリーエンターテインメントにおける、海外事業の今後の展望をお聞かせください。



渡邉:我々の原点は「一つでも多くのIPコンテンツを一人でも多くのお客さまに届ける」ということに尽きます。大好きなIPに関連するコンテンツが不足していて、その情熱を十分に発露できずにいるファンの皆さまに対して、その情熱を思い切りぶつけられる場所を数多く創出していきたいです。



陳:同感です。大好きなIPにもっとのめり込みたいと思ってもグッズを手に入れられなかったり、応援できるプラットフォームが整備されていなかったりすると、その思いをかなえる場所がありません。しかし、例えば我々がゲームコンテンツを世界中のお客さまへお届けすることで、IPとのつながりを持つ手段になり、そういった課題を解決できると考えます。



金:世界中にいる作品のファンの皆さまに喜んでもらえる場をどんどん増やしていきたい。だからこそ、版元さまと許諾先の間で公平な立場として互いに有益であるためにはどうしたらいいかという視野を持ってIPに関わっていきたいですね。



渡邉:改めて、我々の存在価値は、関わるIPの企画やコンテンツをスケジュール通りに、狙った通りのクオリティで世界に向けて発信できるプロデュース能力にあります。数々の成功体験だけでなく、それを上回る失敗体験からも多くを学び、幅広く深い知見を蓄積してきました。これらの経験が全て我々の財産です。IPビジネス、海外ビジネスに精通したフロントマンやプロジェクトマネジメントチームチームといった盤石の体制で「日本発のIPとゲームで、世界を熱狂させる。」を実現していきます。